シカゴ便り(3)シカゴの建築遊歩

シカゴ便り(3)シカゴの建築遊歩

映画のシーンを辿って

Chicagounionstationhall2悠然と水を湛えるミシガン湖を擁し緑豊かな『公園都市』シカゴは、また建築デザインのメッカとしても知られています。1871年の大火によって市の大半を消失後、木造建築が禁止となり、煉瓦、石造、鉄製が推奨された。全米から建築界の俊英たちが、廃墟と化したこの街を実験場として数々の名建築を残しています。彼らは後にChicago School(シカゴ派)と呼ばれ、建築デザインにおいて、多大の影響を与えています。

燦然と聳える近代的な摩天楼、威風堂々とした歴史建造物は、風光明媚な景色と相まって最適なロケーションとして、これまで 多くの映画人を魅了してきました。今回は、実際に映画のシーンを取り上げて、最も登場頻度の高い建築物、Union Station、The Rookery Building、Chicago Board of Trading、そしてAuditorium Buildingをご紹介します。

 Union Station

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ユニオン駅入り口ユニオン駅説明

シカゴの都市計画を推進した建築家Daniel Burnham(1846-1912)により設計。しかし、彼は其の完成を見ることなく死去。10年後の1925年に竣工され、総工費$75million(当時)を掛けたアメリカンボザール様式のNeo-Classical Architecture(新古典主義)の代表です。

コリント様式の花崗岩の列柱、大理石の床、壮麗な”Great Hall”は、訪れる人々を魅了します。高い天井(34m以上)とアーチ型の天窓、彫像、乗継用ロビー、階段及びバルコニーから成り、光輝く大理石のフロアーには長い木製ベンチが規則正しく並べられています。

 この駅舎は数多くの映画シーンに取り入られていますが、その中でもっとも映像効果の高いものは、”Untouchable” (1987)ではないでしょうか。Union Stationが完成した数年前には禁酒法(1920ー1933)が施行されており、あの悪名高きアル•カポネ(1899−1947)が跋扈しシカゴの暗黒街の帝王として君臨していたのは、周知の事実です。然し乍ら、このような公共の場で、一般市民を巻き込むような銃撃戦は起きておりませんので、どうかご安心下さい。

 あの階段シーンーー赤ん坊を乗せた乳母車を母親がゆっくりと一段ずつ持ち上げていくーーが暗転して、ギャングとエリオット・ネス率いる財務省捜査官たちが交わすあの凄絶な銃撃シーンの録画をここではご紹介できませんが、ご興味のある方は、ユーチューブをご検索下さり、Union Stationの素晴らしさを映像でご確認下さい。

 この “Great Hall” は、この他、”Superman:  Man of Steel” (2011)、 “Public Enemies”     (2008)、 “My Best Friend’s Wedding” (1997)、や TVドラマ、”ER“ 等に登場しています。

 

ここで眼を転じて、日本のアメリカ新古典主義の精華と高い評価を受けている三井本館(東京都中央区)をご紹介致します。

三井本館2

昭和4年(1929)竣工。アメリカン・ボザール・スタイルの新古典主義様式。地上7階・地下2階、建築面積4559平方メートル。関東大震災後、”震災の二倍のものが来ても壊れないものを作るべし”という命題と「壮麗•品位•簡素」の理念を具現化するためにニューヨークの会社に設計施工を依頼した。総建築費用は、一般ビルの約10倍。コリント式の花崗岩列柱、軒飾りのレリーフ、内装にはイタリア産大理石がふんだんに使われている。

シカゴのUnion Stationとほぼ同じ時期に竣工され、両者の建築スタイルに多くの類似点があります。

 

 

Rookery Building

rookery building

rookerystaircase

 シカゴの金融街、LaSalle Street とAdams Streetに砦のような重厚な構えのこの建築物は、シカゴ派、Daniel Burnham (1846-1912) and John Root (1850-1891)によって設計され1888年竣工。高さ181フィート(55m)、12階建。世界でも最も古い高層建築の一つです。当時の最先端の技術と伝統的な手法を混合。組積工法により花崗岩を積み上げ、金属フレーミングを組み合わせた近代高層ビルの原型であり、エレベーター、耐火性、電気照明、厚板ガラスが取り入られています。

 豪胆な赤煉瓦のファサード(正面玄関)の回転扉を押して中へ入ると、そこは外観とは打って変わって、誰しも明るい採光の射す別世界に驚嘆の声を上げてしまうことでしょう。このアトリウムは、Rootによりデザインされパリのショピング•アーケードに案を得たと言われています。

 この2階建のアトリウムには純白の大理石のフロアーが輝き、豪奢な大理石の大階段がバルコニーへと誘うように鎮座し、まるでパレスのような雰囲気です。

その大階段の対面にまるで天空に掛かっているような不思議な形のOriel Staircase(飛び出し階段)は圧巻です。Rootによってデザインされたこの鉄製のスパイラル階段は、2階から最上階の12階へと延び、精緻な装飾が施され、このロビーの中でも最も眼目に値するものです。

 1905年、Frank Llyod Wrightによりアトリウムが改装。Wrightは、Rootのオリジナリティーを尊重しながらもより近代的な趣向を取り入れています。純白の大理石、大階段の手すりの両側のプランター、そして天井のペンダントライトは、彼の作品です。

 映画「アンタチャブル」では、エリオット•ネスの勤務する警察本部がこの建物の中に設定されています。

  “Home Alone 2: Lost in New York” では、トイ•ストアー、Duncan’s Toy Chestとしてファサードと1階の一部分が使用されています。

Duncanstoystore

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Chicago Board of Trading Building (シカゴ商品取引所)

board of trade building

 

 

シカゴの金融街、LaSalle StreetとW. Jackson Boulevardにある一際目を引くこの高層建造物は1930年6月に竣工。あの大恐慌(1929年10月29日)より8ヶ月後のことです。Rookery Buildingは目と鼻の先にあります(上記写真の左側、赤褐色の建物です。)

高さ605フィート(184m)、45階建。尖塔にはローマ神話の農産物穀物の女神 Ceres(ケレース)が辺りを一瞥するように立っています。外装内装ともArt Deco(アール•デコ)様式の真髄を集めたシカゴのシンボル的建造物の一つ。アールデコは、1910年から30年代にフランスを中心に流行したスタイルで、単純直線的なデザインが特徴です。アメリカに於いては、ニューヨークのクライスラービル、エンパイアステートビル、ロックフェラーセンターがその典型な例です。

このChicago Board of Trading Building は”Public Enemies“(2008年)のポスターに背景として使用されています。また”Dark Night“(2007年)では、バットマンとジョーカーの戦闘シーンがこの建物のあたりで撮影されています。

ここで、このシカゴ商品取引所を映像でご覧頂きたいと思います。

http://skylinestories.architecture.org/#!/chicagoboardoftrade/video/chicagoboard-form

 Auditorium Building

 

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AuditoriumRoosevelt

 

South Michigan AvenueとCongress Parkwayに鎮座するこの威風堂々とした建築は、Dankmar Adler(1844-1900)と Louis Sullivan(1856-1924)により設計、1889年に竣工。

Adlerは、音響工学の専門家として、Sullivanはシカゴ派の有能な建築家としてその名も高く、両者は、技術上の制約を克服して、高さ広さ重さにおいて当時最大規模の建築を可能にした。電気照明、冷房装置、耐火性を持ち、外壁は、ライトグレーのインディアナ産の石灰岩を用い組積工法を採用。外観は質実剛健ですが、内装はステンドグラス、テラコッタ(素焼き)の装飾、複雑な文様の天井など、優美なデザインが施されています。ホテル、劇場を備えた複合ビルの先駆けと言うべきものです。

このAuditorium Buildingは、シカゴの裕福な実業家Ferdinand Peck(1848-1924)の理想ーー貧富の別なく万人に芸術を楽しむ機会を与えたいーーに基いており、4,200席のコンサートホールは、かって、Chicago Civic Opera , Chicago Symphony Orchestraのホームでもありました。

1945年にRoosevelt Universityによって買い上げられ、現在に至っています。

この建物のロビーは”Untouchable”の中で、エリオット•ネスがアル•カポネに対峙する場面で使われています。

以上、シカゴの文化遺産であり、映画の中に登場する頻度の高い建築物をかい摘んでご紹介致しましたが、この他にもシカゴには、数多くの素晴らしい建築があります。皆さん、シカゴにお訪ねの際は、上を眺めながら、歩を緩め、シカゴの宝物を発見してください。

もっと効率的に系統だって、とお望みの方には Chicago Architecture Foundationのガイド(ボランティア)付きのツァーをお薦めします。電車、バス、徒歩で、目的に合わせたコースが色々と用意されています。

https://www.architecture.org/experience-caf/tours/

また、シカゴリバーを巡行しながら両岸に聳える名建築を眺めるRiver Cruiseも、これからの季節に如何でしょうか。             (幸)

References:

http://en.wikipedia.org/wiki/Chicago_Union_Station

http://en.wikipedia.org/wiki/Rookery_Building

http://therookerybuilding.com

http//en.wikipedia.org/wiki/Chicago_Board _of_Trade_Building

http://www.roosevelt.edu/CampusCommunity/Chicago/AuditoriumBuilding.aspx

http://ameblo.jp/kazue-fujiwara/entry-11875652869.html#main(写真借用)

http://www.adnet.jp/nikkei/kindai/41/