6/23/18 コンサートの夕べ

6/23/18  コンサートの夕べ

 

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序奏 夕食会へ

6月23日(土)気温20℃の爽やかな初夏の風の吹く夕刻、シカゴのミシガン大通りに面するシンフォニーセンターにおいて夕食会と音楽会を開催。

味よし、アクセスよし、プライスも、ほどほどの三拍子揃ったイタリアンレストラン ”Tesori”(宝物)は、コンサートホールまで徒歩3分という足の良さとコンテンポラリーな雰囲気が好評で、演奏会前後にディナーやスナック、ドリンクを楽しむ人々でいつも混雑しています。

明るい採光の差す窓際に設えた丸いテーブルが私たちの本日の特等席。次々と校友4名とゲスト3名の参加者が到着するや、A5サイズのシンプルなシートに印刷されたメニューを真剣な眼差しで吟味する。その中から、グリルドサーモン、野生キノコのピザ、ビーフラビオリ、そして本日のスペシャル、シーフードサラダを注文すると、座の緊張感が緩み、さぁ、乾杯です! ワイン、カクテル、ビール、そしてボトルが可愛いスパークリング·ワインを傾け、賑やかな会話を交わしながらテーブルに所狭しと並べられた料理に舌鼓を打つーーー宴もたけなわとなりましたが、すでに時刻は開演20分前。コーヒーとクッキーのデサートもそこそに演奏会場へと急ぐ。

 

第一章コンサートへ

コンサートホールの入り口でチケットをバーコードに翳し、三階のバルコニー席までレッドカーペットの敷かれた階段を駆け上り、私たちは、それぞれ指定席の中央左側J列に着席。ここでMさんのご友人がコンサート鑑賞に参加してくださり、総勢8人となり賑やかさが増す。

本日のプログラム冊子をおもむろに開く。演奏家、各種イベントの紹介、そして近年ますます増した商業広告などが満載された60数ページの小冊子を捲りながら今日のプログラムに目を通す:

Wolfgang Mozart (1756-1791)  Kyrie in D Minor   モーツァルト: 「キリエ」 ニ短調
Luigi Cherubini (1760-1842)  Chant sur la mort de Joseph Haydn   チェルビニー: 「ハイドンの死に寄せる歌」
Gioachino Rossini (1792-1868)  Stabat mater  ロッシーニ:「スタバート・マーテル」(悲しみの聖母は立ちぬ)

アメリカには、ビッグ5*と称される5大オーケストラがありますが、中でもシカゴ交響楽団(Chicago Symphony Orchestra 略称CSO)は、ベルリン•フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン•フィルハーモニー管弦楽団に並ぶ世界最高峰のオーケストラのひとつです。

1871年に創立され、以来数々の名指揮者を経て現在は10代目となるリッカルド•ムーティ(Riccardo Muti)を2010年に音楽監督として迎え、看板のブラスサウンドの輝きにハーモニーの美しさが加わり、聴衆を魅了します

本日のプログラムは、三作品とも混声合唱団やソロヴォーカリストとのコラボレーションという合唱付きオーケストラ曲の構成です。

それぞれ、心を打つ宗教曲をテーマにしていますが、二番目のチェルビニーの作品の演奏の冒頭、突然、ガッサと異様な音が会場内に響き、マエストロが指揮棒を止めるというハプニングがありました。コントラバス奏者の一人の楽器の先端のピンがずれたようです。マエストロは、「よりによってピアニッシモの時に。。。」と大変なご立腹の様子。すかさず、私たちの席の後方から女性より「ブラボー、マエストロ!」と勇ましい掛け声が飛びましたが、マエストロは、うんざりしたような素ぶりをみせながら、指揮棒を振り上げ、演奏が再開されました。

CSO Facebookより借用

実を言うと過去にも一度、私はムーティ氏の演奏中断を体験しています。前回は、演奏が始まるや否や、聴衆のひとりが「ハ、ハクション!」と大きなくしゃみを発し、マエストロは思わず振り向いて聴衆席に注意を促していました。

コントラバスやチェロのピンがずれることは頻繁ではないけれど、偶に起こるようです。かって、ある名チェリストがリサイタルの最中にピンがずれ、ガックという異音にご本人も少し驚いた様子でしたが、直ぐに体勢を整え演奏を継続していました。

本日のコントラバス奏者も冷静に対応していましたが、内心は肝を冷やしていたことでしょう。

*ビッグ5(ニューヨークフィルハーモニック、シカゴ交響楽団、ボストン交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、クリーブランド管弦楽団)

 

第二章 「スタバート・マーテル」

さて休憩を挟んで一息入れた後、本日のメイン曲、ロッシーニ作「スタバート・マーテル」の演奏です。

ロッシーニは「セヴィリアの理髪師」(1816年)、「ウィリアム テル」序曲(1829年)など、オペラ作曲家として広く親しまれていますが、その作風は、アップテンポの明るい高音を特徴としています。

「スタバート・マーテル」は、英訳するとStanding Motherですが、カトリック教会のミサにおいて用いられる聖歌で、13世紀にイタリアの修道士によって書かれたという詩をもとにしています。磔刑に死したイエスの傍らに佇み悲嘆にくれる聖母マリアを描写していますが、宗教曲というより、その美しいアリアは、まるでオペラを聴いているようです。単なる明朗な技巧家でない、宗教への敬虔に満ちたロッシニーの隠れた一面を感じます。

また、37歳の若さで引退したロッシーニですが、人生の後半期は、美食家として知られ、厚切りのステーキ肉に、フォアグラ、トリュフのレイヤーを重ねたトゥルヌド・ロッシーニ(牛ヒレ肉のロッシーニ風)は広く親しまれています。

 

あとがき

本日は、珍しいハプニングありのコンサートでしたが、ライブコンサートならではの人間臭いエピソードとして今後も長く、参加して戴いた皆さまの記憶に留まることと思います。

ご多忙の中、時間を割いてお越しいただいた校友とゲストの皆様、本当にありがとうございます。

今回、ご都合が悪くお聴き逃された校友の皆様も次回は是非ご参加くださいませ。

 

 

 

 

 

 

スタバート・マーテル」の総勢200人近い混声合唱団の美しいハーモニーは人の声に包まれる醍醐味と至福感を味わいました。その感動を私の駄文をお読みいただいた皆様へお届けしたいと思います。全10篇の作曲のうち、最初の導入部分です: